2009.08.10 Monday
制作ノート/空と海の・・・Vol.1
新たな地塗りを施して
塗っては乾かし
乾かしては塗り またも乾かす
書家である篠田桃紅のことばをふッと思いだす
「待つのも仕事のうちだわよ」と
だが この空模様の雨模様
耳慣れたそんなことばは無視するかのように
待ってもせんないじゅくじゅくの日は
『ラヴクラフト全集1』をこっそり持ちだして
「インスマウスの影」を読んでみる
塗っては乾かし
乾かしては塗り また乾かして
「インスマウスの影」をとつおいつ読んでみる
ニューベリーポート歴史協会の陳列室に並べられた
奇妙な冠の箇所へさしかかると
筆洗のなかで赤い絵具を流したまま沈んでいる絵筆をそのままに
そのまま「インスマウスの影」を読み漁る
インスマウスという町へ向かう風景の観察眼は
ロブ=グリエの『嫉妬』にでてくる柱の影の角度のようだ
生臭い匂いの風が吹く海岸線の風景
その風景とラヴクラフトの角度の有様こそが骨頂と
「インスマウスの影」を読み終える
地塗りが済んで
夕餉が済んで
まだ観ていない『スウィーニー・トッド』を観る
「インスマウスの影」も『スウィーニー・トッド』も
網膜へ映り込んでくる影のディテールがいいなと思った
ながながと寝床へ倒れこんで すぐまた起きる
赤江漠の『野ざらし百鬼行/永仁五年三月の刀』と
赤江漠の『美神たちの黄泉/草薙剣は沈んだ』を
なんだかペラペラ捲ってみたくなったから
「インスマウスの影」第5章の有様は
「永仁五年三月の刀」の後日譚として
「草薙剣は沈んだ」の物語を結びつけたようなものだ? と
わたしはかなり強引に
しかし率直に結びつけて
安堵の海へと沈んでいった