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練りものに取り囲まれた時代
乳牛はのべつまくなしに切目なく妊娠させられ続けます。……(中略)子牛が生まれると……(中略)。子牛が飲むべきミルクは商品として搾乳機によって搾乳されますし、子牛が一瞬でもお母さんのおっぱいを飲むという幸福な体験を味わうと……(中略)何もわからないうちに違うところへ連れていかれるのです。

そして子牛は次の乳牛に仕立て上げる……(中略)ミルクを飲ませるわけにはいかない。……(中略)もっと安くて、しかも高タンパク質の栄養分を代用乳として与えなければなりません。

そこでイギリス人たちは……(中略)家畜の死体を思いついたのです。

牛や豚や羊の死体を集める。大釜で煮て……(中略)脂を漉し取り、残った肉かすを乾燥させて、パウダー状にする。これを肉骨粉と呼んでいました。

子牛はもちろん、そんなものは飲みたくないわけですが、……(中略)

スクレイピー病で死んだ羊の死体が肉骨粉の材料の中に混じっていて、それを食べた牛から狂牛病が現れた……(中略)草食動物を肉食動物に変え……(中略)牛に牛を食べさせる、羊に羊をたべさせる……(中略)強制的な共食いをさせた。

燃料費を節約するため、その工程を三〇分程度で(通常は死体を二時間くらい煮込む)やめる……(中略)熱風を当ててカラカラになるまで肉骨粉を乾燥させていたのも、生乾き状態でやめてしまった。

肉骨粉中に病原体が生き残るようになり……(中略)狂牛病が発生したというわけです。

牛の狂牛病よりもヒトの変異型ヤコブ病(クロイツフェルト・ヤコブ病)のほうが潜伏期間は長くなります。おそらく、狂牛病が発生した一九八五年前後に、イギリスの場末の安いパブで、汚染されたくず肉などで作られたハンバーガーやミートパイを食べた青少年たちの中に、10年くらいの潜伏期を経て、この病気が現れてきたのだと考えられます。

イギリスは、自分の国の中で狂牛病の原因とわかった肉骨粉を、そのまま外国(フランス、アジア、アメリカなど)へ売りさばいたのです。

日本政府は、イギリス産の肉骨粉が、いつ、どれくらい輸入されたのか、その実態をきちんと把握していません。しかし、イギリスの輸出統計では、一九九六年の禁輸までに三〇〇トンを越す肉骨粉の輸出が、日本向けにあったとされています。

日本では二〇〇一年に狂牛病の第一号が……(中略)

アメリカにはトレーサビリティ(流通経路が記録され、追跡可能な状態にあること)に当たるものが何もない……(中略)日本と同じくらいのところまでハードルを高めてくれれば、これは貿易摩擦でも何でもありません。

肉骨粉を売りさばいてしまった人……(中略)が経済的な利益を得て、そのリスクだけが下流のほうで消費者に流れて……(中略)狂牛病は、終ってもいないし、解決もしていない。

ファストフードの安いハンバーガーには、一個あたり五〇〇頭の牛の肉が入っていることもあります。

牛肉の格安の部分をいろいろなところから集めて、巨大なシステムの中で混ぜ合わせ、均一化し、量産する、見えないプロセスがあるのです。


福岡伸一『生命と食』岩波ブックレット No.736 岩波書店より
*『生命と食』は格安の本(¥480)ですから、一度手に取って読んでみては………。特に、若い人へお勧めします。

福岡伸一;1959年東京都生れ, 京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了. ロックフェラー大学およびハーバード大学医学部博士研究員. 京都大学助教授を経て, 青山学院大学理工学部化学・生物科学科教授. 専攻は分子生物学.





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