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光あれ!


階段を上った二階には僕の部屋があった。
鉄のハンドルを回して扉を開き、メムリンクとともに部屋へ入つたが、いままで誰もいなかったせいか、ひんやりと澱んだ冷気に包まれて二人はゾクッと身震いした。メムリンクが身体を寄せてきたと同時に、手に持った蝋燭を僕は高くかかげながら威勢よく叫んだ。
「光あれ!」
「バカね」と、メムリンクが大声で笑った。
屈託のないその笑顔に満足して、僕も大声で笑った。そしてもう一度、
「光あれ!」と叫んだ。
「クックッ、ほんとうにおバカさん、ここは二十一世紀じゃないのよ。壁にスイッチのオンとオフのボタンを捜したってありっこないわ。フフッ、まったくおかしな人」
「灯かないな?」
「灯かないわよ」
「そうかな〜。そうだよね、灯くわけないよね」
と僕はとぼけ、雪明りでぼんやりと光った窓にむかって歩き、窓の窓辺に並べておいた大小さまざまな蝋燭へつぎつぎと明りを灯した。
「わあ! とても奇麗。見て、窓の硝子がレースの刺繍のようだわ」と、メムリンクは珍しく興奮して喋った。
見ると、今朝そのままにしておいた窓硝子の露がさまざまな形に凍てついていて、シギショアラの町角で見た東欧刺繍の紋様のように美しく光リ輝いていた。

*ルーマニア国物語『トランスシルヴァナイト』(きみの乳ぼくの血)のあらすじは、こちらのトランクを開けて下さい。全文を読んで下さる方は、フロント・ページ左にある “CATEGORIES” の列の「トランスシルヴァナイト」を開き、下から順次上に向かってお読み下さい。主な登場人物はこちら。


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