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死にあこがれて


船はアドリア海をカミソリの刃のように帆走していてね
デュラッツォ スパラトを寄港した後
レムはツァラで下船するつもりでいたらしいのだけれど
当時ハンガリア王国の港町だったリエカで降りて
ザグレブの町からサヴァ川を小舟で下り
〈白い要塞〉を意味するベルグラードへ出て
ドナウを下ってしまえば
あの懐かしいブカレストまでじきだった
だが 私はずっと考えていた
叔父様が住んでいらっしゃると聞くブラン城へではなく
伯母様の住んでいらっしゃるフォガラシ城へ戻りたいと心に決めていたの
伯母様は人々から忌み嫌らわれて恐れられていたけれど
あなたもご存知のように それは嘘! よね
伯母様はすてきな“魔女”なだけよ
できるだけお傍にいてあげたいと思ったの
だって わたしはとてもお世話になったから
それにね・・・
赤とエンジと血とバラ色のアヘンが匂うこの肌を
なんとか消滅をしておきたかったの
そこでね 伯母様とご一緒に暮らしてみたいとレムの王に嘆願したの
願いはかなって
三年だったかしら? 三十年だったかしら? それとも六百年だったか?
ともかくも 何年だか忘れちゃったけれど暮らしたの
それでね そこで伯母様に私という女の顔を
まるで衣類を脱ぎ捨てるかのように捨てていただいたの
人魚姫がその尻尾を捨てたように
代償!? そんなものありゃしないわ
二度と人魚には戻れないとか・・・
愛する人と魂をわかちあえば幸福になれる・・・とか
可愛い舌を切り落される・・・とか
代償なんて そッ そんなものはありゃしない
絶対にありはしなかった・・・
絶対に・・・ なのに今日はどうして涙が流れるの?
今日は涙がぽろぽろと
ほら ざあざあとこんなにも流れて
涙を流すと 
なにもかもがなくなっていくのが恐いの!
ねえ

わたしの背中 
わたしのお腹
わたしの黒髪
ああッ!
ああッ! あッ!
ギー! わたしをつよく抱きしめて!
神と呼ぶさえ呪わしき私の亡霊を(つづく)


『トランスシルヴァナイト』のあらすじは、こちらのトランクを開けて下さい。全文を読んで下さる酔狂な方は、ブログのフロント・ページ左側の最下
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