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秘密書簡文


フランドル伯ボードゥアンがコンスタンティノス帝11世の玉座へ土足で座って、ラテン帝国とやらを名乗っていたころ、私は傷の癒えかけた体を曳きずっているギーとともに、瑠璃色の海峡が見えるビザンティン帝国の坂道を、まるでドブネズミのように隠れながら、ころがりながら逃げるようにして歩いた。
ころは初夏の若葉につつまれたころだった。
藤の葉影からはボスボラス海峡が見え隠れして、黒海から流れくる潮目にヴェネツィア艦隊の軍艦がちまちまとした可愛いらしい玩具のような格好で浮いていた。わたしたちの足元には藤花や藤棚が砲弾で吹き飛ばされていたが、そんなことにはめげず、薄紫色の花房や、白い花房を地上へ咲かせていた。

そんな美しい花々とは対照的に、街角ではボードゥアンの手下たちが居睡ったりカード遊びをしていたが、城塞の大砲はいまも光る目のように大きく輝いていた。

そんな季節になってようやく、隠れていたものたちへ極秘の秘密書簡文が舞い込んだ。

   ×月×日ノ夜
   ミジエ港ヨリ
   船出ノ事ゾ在
   ドラキュラ王子

だが、ミジエの港はあまりにも遠かった。しかし、敵の目を忍んでゆくしかなかった。 石畳の上に壊れてひろがっていた藤棚の柵を踏み越えた刹那、ギーの右脚の爪先がこれに触れてガチャ!と音がした。ボードゥアンの手下たちはむっくと起き上がって、わたしたちはその場で捕えられ、離ればなれになってしまった。

ギーのような少年たちは皆エルサレムの戦場へ・・・
私のような少女たちは愛の囚虜人となって閨房へ・・・

ギーの乗った男船。どんぶらこっこ、どんぶらこ。 
私の乗った女船。どんぶらこっこ、どんぶらこ。 

この舟は、故郷のドナウ河から流れきて、はては黒海の潮となり、地中海へ流されるがまま流される。

ギーさま恋しやほうやれほ〜 
ヌヌさま恋しやほうやれほ〜

舟は故郷とはまったく反対にむかってエーゲ海を南下した。
私はくしゃくしゃの顔をしていたので安全だったが、本当はそんなに甘いものではなかった。ふだんは看護婦帽子で後頭部を押さえていたので、その反動でくしゃくしゃの顔をしていたが、私の後頭部はエジプトの王妃ネフェルティティと同属で、目や口はその重さによって引っぱられて狐のようであった。まあ! いずれにしても変な顔をしていたのだ。だから、ボードゥアンの手下たちは私を見捨ててしまったが、ヴェネツィア商人は流石、私の隠された非凡さを(ちょっとショチャッタかしら)見逃さなかった。かくて私はエジプトの大富豪へと売られてしまったが、ドラキュラ王子は無事に故郷へ帰れただろうか? ギーはあの五体で聖地奪還軍として働けただろうか? 聖家族ジュビナイル騎士団だった少年たちは・・・?

ふるさと恋しやほうやれほ〜 
ギーさま恋しやほうやれほ〜


*『トランスシルヴァナイト』のあらすじは、こちらのトランクを開けて下さい。全文を読んで下さる酔狂な方は、ブログのフロント・ページ左側の最下位にありる“CATEGORIES”の「トランスシルヴァナイト」を開き、下から順次上に向かってお読み下さい。


| 東欧奇譚/未完 | 00:19 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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