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ジタン煙草の青い空箱


ひそひそと乾いた広場に落ちているジタン煙草の青い空箱を、エナメルヒールの踵で踏みつけながら、ゆったりとした歩調で女が墓地から戻ってきた。



時計台の針は十五時二十五分を指している。
ホテル・コロジュヴァールの前の広場には小さな馬車が止まっていて、馭者と僕はその馬車の前で女を待っていた。
広場の隅っこで数人の子どもたちが煙草をふかしていた。たぶんジプシーの子どもたちであろう。一団のなかで薄化粧をした少女が、墓地の泥で汚れてしまった女の靴をじっと見つめていた。

老いた馭者が小さな馬車の扉をあけると、女は腰を先に椅子の上へのせてから、形よくふくらんだ白い足脚のふくらはぎをそろえて、腰を軸にくるりと回った。
僕もそのあとにつづいて乗り込んだ。
 
馭者はしばらくして「ほう〜」と叫び、細いムチを黒い馬に放った。すると、馬がいななき。車輪がカラカラと回転し、乾いた広場に埃が立って、ホテルも教会も墓地もあばら屋も、みんな後へ流れて消えた。


*この詩は、10月22日の「迂回」へと続く。あるいは、あらすじになっている10月19日の『ルーマニア国/旅の予定図』へと続く。


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