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抜け道のようなアラベスク




第一章/王国行ポッポ機関車 或は、葡萄唐草 晩夏


むせかえるような機関車の蒸気と
眩しくかがやく照明機器のピン・ライトの中に座った女
しかし 彼女はそこには居なかった
一八〇九年八月三十一日晩夏
約束の十九時四十五分であったが
ブダペスト東駅のプラットホームに
かの女は居なかった

彼女はパリの古いスタジオで
若いカメラマンとともに時を過ごしていた
言わば これはひとつの幻影であり
周到なアリバイであって
本当は
彼女はブダペストには居なかった
そして 僕も異国にいてまだそこには居なかった

スタジオの角に置いてあった簡易ベッドに座った女と
どこかの駅舎を撮影したカメラマンが
ひそかに情交を結んだときに見たであろう女の物語であり
女に懊悩する男の嫉妬から生まれでたアブク玉のような物語であり
他人であって 兄妹であり 恋人のような迷子の二人が
勝手気ままにハンドルを回しはじめた
これは重なりあって発光するモンタージュ・フィルムなのだ

だから僕たちはいとも簡単にブダペストから黒い汽車に乗って
ハンガリアとルーマニアの国境を四輪馬車で超え
コロジュヴァールで一夜を過ごしてから
なんどでもなんどでも森の彼方の地へとルフラン(塁句)する
こうして重なりあう幾枚もの画像は森の力によってやがて一枚となり
求めあう僕の血と君の乳は声を低め耳を澄ましあう
父の父の………母の母の………迷宮地図を旅するこれは抜け道


*上記の詩と、カトリーヌ・ドヌーブを起用したルイ・ヴィトンの一発撮り写真のポスターとはなんら関係ない。

この詩は、10月14日の 「トランシルヴァニアン・グリーン」へと続く。


| 東欧奇譚/未完 | 12:35 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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