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<< 無言の会話 | main | Fの11番という役者 >>
30分間の散歩
 かかえていた仕事が二つ同時に終わったので、ビールをやってから手作りのザクロ酒を飲んで一服していたら、急に風がでてきた。しばらくするとゴロゴロピカピカと騒がしくなった。十九時二十五分、雨はまだ降っていなかったので早速に外へでた。近くに広い公園があって、そこのベンチに仰向けに寝転んで夜空を見上げながら、遠くのほうで鳴っている雷鳴や、広範囲にひろがってゆく稲妻を楽しんだ。
 なにか為体の知れないものでも待っているかのように。あるいは、カウンセリングでもするかのように。はたまた、滅びの仕度でもするかのように。こうしてわたしはゴロンと、空や夜空を見上げる癖がある。
 飲んだザクロ酒が効いてきて気分もいい。ひんやりとした風が吹いていたので蚊の野郎もいない。考えてもみれば、今夜は皆既月食だ。だが、このお天気では土台無理だろうなと思った。空の雷さんはゴロゴロピカピカとあいかわらず不機嫌だが、不機嫌になればなるほどわたしは楽しい。
 とてもご機嫌だね、と話す相手もいないが、ひとりごちしてみる。またピカッと光った。この瞬間に、遠くで自転車に乗った白いシャツを着た男が、背中をまるめながら急ぎ足でペタルを踏んで消えていくのが見えた。きっと、いまに雨が降ってくる。
 ベンチで横になったまま、わたしは先ほど電送した某文芸誌のアンケートについて、いまさらながらラチもない思いをめぐらせてみた。沢山の質問があった中、「生まれ変わったらなってみたい歴史上の人物は誰か?」というコメントに悩んだからである。だれを選んでみても、所詮は詮無い答えのように思えてノーコメントにするつもりであったが、そこまで格好つけることもないだろう。これはサービスなのだからと自分を納得させた。すると、いろいろな人物がよぎった。が、もっとも最初に浮かんだのは役小角。そして、最終的に残ったのが刀鍛冶である千手村正だった。ところが、この答えは自分にとってあまりにもリアルであり、バカ正直すぎていてつまらなかった。すると、もっと夢のある人物がいるだろう? と、もう一人の自分が叫んだ。ははあ〜ん、あの人だなと思った。タイプライターを叩き、飛行機を母とし、風と砂と星を愛して、人知れずに死んでいったサン=テグジュペリのことだと思い当たった。

 突然に、ぱたりぱたりと大きな雨粒が落ちてきた。地面を眺めて見ると三センチメートルほどの雨痕が斑紋様に散っている。少年時代のサン=テグジュペリが大雷雨の日によく遊んだという「騎士アクランの遊び」を思い出して、わたしは走った。が、まばらで大粒の雫にすぐ濡れてしまった。「騎士アクランの遊び」とは、大粒の雨を避けながら走って、最後まで濡れずにいた一人が《騎士アクラン》の称号をつぎの雨の日まで名乗る権利を保持できるというものであったが、早々に、わたしは雨にやられた!と、情けなくもこの雨に濡れながら名乗りをあげて歩いていたら、近所に住んでいるイラストレーターの北見隆さんと偶然に出会った。北見さんは自転車に乗っていたので、滑らないようにね。と、わたしは彼に声をかけて別離した。

追記>>>この日記は29日の午前00時00分11秒にアップしたが、朝起きて朝日新聞の朝刊を読んでいたら、サン=テグジュペリの『星の王子さま』を使った広告が載っていた。5面の全段を使用した全面十五段の広告で「この星のエネルギーとエコロジーのために。東芝」となっていた。
 なるほど、これからはいま以上にサン=テグジュペリの『星の王子さま』へ、またもや新たなスポットがあたる時代がやって来るな。と思った。
| 日々是好日 | 00:00 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
メールありがとう。君に素敵なストーリーがあって、ぼくはとても嬉しいです。その方はいま翻訳中なのでしょうか?お元気でがんばっていらっしゃるのなら、君からいっぱいいっぱい心の便りを差し上げてあげて下さい。きっと新たな出会いがあると思いますよ。
ところで、『星の王子さま』の件なのですが、ぼくもそう思います。いままで読んだ訳はどれもまどろっこしくて全然その良さを引き出していないと思います。ぜひ、その方の本を拝読させていただきたいです。
9月にまたお会いできるのを楽しみにしています。じゃ、元気で。
| migumi | 2007/08/31 10:49 AM |
地元から帰って来て久しぶりにパソコン開けて、先生のブログ読んでます。
サン=テグジュペリ。私と生まれた日が一緒です。
私の知り合いで『星の王子さま』を日本語に訳している人がいます。
その人はもうおじいちゃんです。英語の先生です。一緒に海外に行った仲です。
『星の王子さま』は色んな人に訳されているけど、まったく違う!!と言うのです。

わたしはその先生に沢山の本をプレゼントされました。ゴッホの生涯とか画家の写真集とか。その先生のおかげで美術に興味を持ったのもあります。もし、その先生が訳した『星のおうじさま』が出来たら先生に見せたいなぁ。


| kawai minori | 2007/08/31 4:34 AM |
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