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無言の会話
 日曜洋画劇場40周年特別企画で、藤沢周平原作の『蝉しぐれ』黒田三男監督(2005年)をTVで観た。
 藤沢周平といえば、熱狂的なファンを獲得している作家なので、わたしごときがとやかく語るつもりはないが、映画『蝉しぐれ』について少しだけ書いてみたいと思う。
 ストーリーはいまさらながらなので書かないが、海坂藩藩主の寵妾になった幼なじみの福(お福さま)が尼寺である白蓮院の仏門へ入るという手紙をもらった文四郎(郡奉行牧助佐衛門)が、海の見える宿屋でラストシーンに福と密会する場面がとても印象に残ったからである。
 お福役の木村佳乃は始終おだやかに微笑しながら、まるで夢の中にいるような表情をしている。文四郎役の市川染五郎も夢の中だ。二人は子供のころの思いで話をぽつりぽつりと交わしている。しかし、発音する言葉よりも無言の言葉のほうが多い。この映画を途中から観た人なら、その進展があまりにもとろくてチャンネルをひねってしまうだろう。だが、最初から観ている人であれば、この無言の間合に交わされている台詞を百人百様が、それぞれの思いで観ていたはずである。原作にはないが、この宿で「お福さま」と敬語で呼んでいた文四郎が「福」と一度呼び、二度呼ぶ間に表情をつぎつぎと変えてゆく木村佳乃という役者の演技に好感がもてた。表情を変えるだけのなんでもないシーンだが、なんでもないシーンだけに、きっと難しいだろう。それを、この女優はよくこなしていた。
 映画『蝉しぐれ』のこのラストシーンは、遠い昔の時間とこれから先の時間が綾をなして、進むでもなく止まるでもなく、夢としかいいようがないうちに終わってしまう。だが、原作は「あのひとの白い胸など見なければよかったと思った」と、はかなさとくるしさに葛藤する文四郎のこころ模様に、“しあわせ”という言葉を残して終わる。

 義父(緒方拳)との別離。剣の技。そして、愛。無言という沈黙の世界が魅力的な映画だった。
| 映画 | 13:34 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
ぼくたちは大海でであったプランクトンですからね!? それとも、ボルヘスの比喩だろうか、城館でであったエリザベートと騎兵部隊長ですから(笑)
そちらでの展覧会の反響はいかがですか・・・あなたのブログによると、シナモンロールさんという方が展覧会にむけて渡独されたとか、プラットホームで無事再会されましたか。たぶんこの方がウイリアム・ウイリアムスのメッセンジャーさんなのでしょうか。その方に宜しくお伝え下さい。
| migumi | 2007/08/27 7:19 PM |
ああ、驚きました。
実は私は友人が藤沢周平が好きで沢山持っているのです。私は今まであまり読んだことの無いジャンルだったのですが、実は「蝉しぐれ」今読んでいたのです。(!!!!!)
そこで、この記事の中で映画の話とは言え題名を再発見したので、なんとも驚きました。
不思議な気分。。。
| seedsbook | 2007/08/27 4:45 PM |
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