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赤目四十八瀧心中未遂
 
 すべての鍵は、鍵のない部屋と鍵の開かない窓に・・・
 東京国立博物館の敷地内に仮設された映画館・一角座から招待状が届いたので観にいった。たぶん、イラストレーターの寺門孝之氏が手配して下さったのだろう。氏はこの一角座で「寺門孝之映画画展”一本角の夢”」を同時開催している。一角座は『ゲルマニュウムの夜』『ツィゴイネルワイゼン』『どついたるねん』『陽炎座』etcと、映画監督の荒戸源次郎氏が関わったり監督した八作品がロングランで上映され、大勢の豪華ゲストによるトークショーも開催されていた。
 今日の映画とゲストは、『赤目四十八瀧心中未遂』の原作者である車谷長吉氏と主演女優の寺島しのぶさんだった。このカードは絶対に見逃したくなかったので、美術学校の授業が終るやいな小雨降る鈍色の街を上野まですっとんで行った。気恥ずかしかったが、最前列のど真ん中の席が空席になっていたのでその座を温めることにした。最初に、この映画の監督であられる荒戸源次郎氏が挨拶し、トークショーがはじまり、途中、大森立嗣氏監督も飛入りした。
 その後、『赤目四十八瀧心中未遂』がはじまった。159分という上映時間であったがアッという間に過ぎ去ってしまった。それほどに素晴らしく、妙に生温かいリアリティーがあって、なによりも゛怖い゛映画だと思った。〈綾〉役の寺島しのぶは適役であったが、〈生島〉役の大西滝次郎という役者は最初「やけに若いな。それに、線が細くてクソまじめすぎる」と思った。だが、観ているうちにだんだんと引き込まれていった。ラスト近く、赤目の山中をカッ、カッ、カッと下駄履きのまま石の階段を無心にかけのぼったりかけ下りたりしている〈生島〉のただならぬ心情を見せつけられて、いい役者だと思った。
 この映画の赤目四十八瀧という場所は三重県西部にある名張市で、ぼくが小学生だったころ、婦人会の旅行で父や母と何度か行ったことがあった。そんな風土性に対するノスタルジアからか、それとも、首を少し右に回せば映画の中の〈綾〉よりも今はほっそりとはしているが眼差し鋭く、しなやかな花を咲かせている寺島しのぶさんが傍で一緒に映画を観賞されていたからであろうか・・・、あるいは、スペシャルな劇場のせいか・・・、ともかくも、男と女のスリリングな機微が絶妙で、そのリアリズムがなんとも肝に堪えてしまった。
 この映画の原作本は発売まもなくして読んだが、映画に対する印象度の方が強く残りそうな素晴らしい映画だった。たぶん、鍵は鍵にあると思った。
 最後に、一角座の音響装置が良かったことを付け加えるとともに、ホールで荒戸源次郎氏を寺門氏に紹介していただいたが、いまだ『赤目四十八瀧心中未遂』を観ていなかったのですこぶる緊張し、恐縮してしまった。いい歳をして、このところ未熟者と思う日が多くなった。

 ※追記 写真は赤目四十八瀧へ行ったときのものではないと思うが、どこでかは記憶にない。タヌキ顏の弟とキツネ顏のぼく(小一か小二)の写真だ。バスの窓には「三重村婦人会」と記してある。荒戸氏の映画に、赤目口で三重交通のバス(今は白と緑のツートンだが、古くは青とアイヴォリーのツートン)が少し傾きながら客を待っているシーンがあった。ぼくは東京でこの白と緑に塗りわけられた三重バスを見つけると今でもなぜか胸キュンとなってしまう。余談だが、愚作の書・画・文集『山頭火さん』のブックカバーはこの三重バスへのオマージュを装丁にしたものである。ほかに、近畿日本鉄道への思いも深い、映画のラストで大和八木駅で綾と生島が別離するシーンがあった。女は近鉄橿原&京都線で京都から博多まで(大好きな藤桂子の世界だ!)、男は近鉄大阪線に乗ったまま、空蝉状態でふりだし駅のある難波や天王寺界隈へ、そして、たぶん、曽根崎新地かどこぞへと流矢していく。
 八木駅とはそのような駅なのだ。
| 映画 | 23:59 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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