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ギリシャ悲劇的ジュビナイル・ロマン「空白ノ王国」 Vol_002

ギリシャ悲劇的ジュビナイル・ロマン
Icon_降りてくる手(部分)
606×455mm 2020
acryl gouache
poem_あぶく玉



   「あぶく玉」

静かな水面に突然、あぶく玉がポカっと浮かんだ。えてして沼地や水田に多いが、いずれもメタン菌が放出するガス状の球体である。そんなあてどない球体を武蔵野崖線の沼地でぼんやり待っていると、右へ左へ息苦しそうに喘ぎつつ、銀色に光ったあぶく玉がゆらゆらと立ちのぼってきた。ガス玉はいよいよ膨れあがって出現して、鈍器かなにかで殴られたような音を発し、またもやポカっと割れ、青じろい痼(しこ)りだけを残しながらどこかへ消えていった。

他愛ないものにもあるだろう物語を思うとき、私は果てのない淋しさに突き落とされてゆく。

道で会った男を殺し、村で女と交わったがそれらは父母であった。とか、威張りくさった神々の生贄に愛娘を捧げてしまった男がその妻に殺され、あとに残った子どもたちがその母を殺す・・・ これはギリシア悲劇だが、三千二百年も前から、いま、そこで、ゆらゆらと立ちつくしながら壊れかかっている人影の、脆くも危なっかしい不確実性が原因であった。








| ギリシャ悲劇的ロマン | 16:34 | comments(0) | - | pookmark |
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