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「オートバイ」A・ピエール・ド・マンディアルグ
Facebook/Book Cover Challengeより
読書文化の普及に貢献するために好きな本を1日1冊、7日間投稿するチャレンジ ・リレー!四回目です


小説「オートバイ」A・ピエール・ド・マンディアルグ
訳 生田耕作
白水社
装幀 北園克衛


ふるさとは三重県の四日市、そこから鈴鹿サーキットまで赤いスポーツバイクをブッ飛ばし、土・日にアルバイトしていた。高校一年生のころで、サーキットに漂う英国製エンジンオイル「Castrol_R30」の甘い強烈な香りを嗅いでいたかったからだ。東京へでてきてからは、横浜のオートバイクラブ「ケンタウロス」の看板持ちになって第三京浜や首都高速羽田線をSR500やドゥカティ・マーク3でよく走った。「ケンタウロス」には大倉流能楽師の大倉正之助氏も出入りしていた。私は幼いころから五七調の教典を祖母から教えられ、同じような調子で謡われる能の文言が気になって能は観ていたが、氏の大鼓に圧倒されてからは、尚、よく観るようになった。
前口上が長くなったが、A・ピエール・ド・マンディアルグの「オートバイ」には並々ならない思い出が詰まっている。最初に読んだ「海の百合」で幻惑され、つぎにはもう「オートバイ」を読んでいた。映画「あの胸にもういちど」もよかったが、小説「オートバイ」は風の文学だと思った。そして、これは夢幻能だとも思った。

若いヒロインの人妻が、ハイデルベルグに住んでいる恋人のもとへ大型バイクに乗って逢いにいくまでの物語だが、それは表層的なものであって、途中アルザスの森でヒロインが休息したときから物語は内的なものへと移行してゆく。例えば、針葉樹の木々の葉むらがかすかにうち震えることに気づきはじめたヒロイン。その気づきは平凡な結婚生活では味わうことのできなかった深いところで眠っている欲望の震えであって、ハイデルベルグの男の指のなかで愛されたことのある自分を回想しながらも、オートバイが内包している荒々しい疾走感に身をまかせつつ、やがては風となって徐々に徐々に錯乱し、恍惚してゆく。これは唯識仏教の影響をうけた能の特徴にも似て、人間を真二つに割って構成する思い切った仕掛けがこの「オートバイ」には隠されてあった。いつか機会あればそのことをもっと書いてみたい。(長くなっちゃった。^_^)



* 大倉正之助さんや能に興味ある方はどうぞ! 能楽サイト「the能ドットコム」に掲載していただいた私のエッセーです。
http://www.the-noh.com/jp/people/essay/002michihico.html







| 文学 | 09:26 | comments(0) | - | pookmark |
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