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イリアス・オデュッセイア/般若王


無鉄砲なことをいえば、エーゲ海はひとつの都市である。

むろんそこに浮かんでいる島々はそれぞれの〈シマ〉であり、守るべき火場所であって、アスファルトの海に点在する島々には神殿もあれば城もあって、館や樓郭、映画館やサーカス一座の見世物小屋、鍛冶屋、考古学博物館、バラック、植物園などなんでもあった。寄り道するにはことかからなかったが、橋をわたったり船にのっていかなければならない〈シマ〉もあった。だが中心街の山道をのぼった一郭には立寄りがたいほどツンと澄ました高級住宅地があって、赤ら顔をした〈神々〉と呼ばれるわけのわからない連中が住んでいた。そんな時代のそんな街はずれにあるイタキという貧しい島に、その男は住んでいた。

ところがこの男のことを知らないものはいなかった。けむし男、のっぺらぼう、イオニア海の田舎者、愚者、ひねくれ者、ペテン師、知恵者、浮気者、さまざな悪名や異名で呼ばれていた。ともかくも、なんにでも対応できるマルチな男であった。人であれ神々であれ、その男の力を利用しようとする反面、恐れられてもいた。では、何者であろうか…。オデュッセウスという名の金看板を背中にしょった、とびっきり繊細で無欲透明な般若王であった。けれども般若だという本性をだれも知らない。(僕のイリアス・オデュッセイア詩画 「ないない王とトロイアの女たち」より 2018)



今年も大変お世話になりました。皆さま、どうぞ佳き新年をお迎え下さい。





| ないない王のオデュッセウス | 14:36 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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