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イリアス・オデュッセイア/カリュプソは初戀の味



うつらうつらとして、これは夏の昼寝でみた夢だろうか・・・。さっき二人して飲んだ白いカルピスはもうどこにも出口のない蜜の味がしていた。蜜は甘苦く、初恋の味であった。それがペネロペイアとのものであったかそばにいるこいびととのものであったかすらわからないでいる。そんな自分のからだをみつめながら、オデュッセウスはザクロいろしたこいびとの裸の丘のうなじへ登って、今日も遠い水平線の裏側ばかりをのぞき込んでいた。

光や風がぴゅうぴゅう騒いでいる北回帰線の振動にあぶられて、オデュッセウスは休息のふかみからのがれたいと願っていた。

「こいびとよ! おれはおまえとのここちよい蜜月の打撃からのがれて、にんげんの女が住んでいる故郷へ還らなくてはならない。だっておれは赤い血が流れているにんげんだし、その女ペネロペイアは初恋の人なのだから」

するとドルフィンのようにしなやかだったニンフ・カリュプソのからだがわなわなとふるえだし、腰につけていた花の甘いひだが二人のうえで弧をえがいたかとおもうと、気丈夫にほほえんだ帆をいっぱいに孕んでみせて夢のように美しい船を一艘かたちづくってくれた。(ぼくのイリアス・オデュッセイアより、絵は「カリュプソは初戀の味」2018)






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