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藤原北家贋縁起物語 Vol.033_01

ワニ皮の男と金魚のポピンズ「水と海水」第三話 Vol.01


         1     〈鱗ヶ姫の磯笛〉

  足元のここには死んだ母の家があった
  海に面した低い軒の屋根に石をのせた手づくりの
  粗末な家の小さな窓へ
  くりかえしくりかえしやってくる
  海の
  風の
  潮の
  においをのせたトビウオのやつ
  そんなふうな小屋の裏手には
  牡蠣殻をひとつつけた海女舟が
  ぽつんと朽ちはてて置いてあった
  暗い大きな口をあけた弓なりの 
  舟胴の下に離々と幾重にもひろがった
  蒼い雑草にまじりあって
  だれのものでもない
  白い野菊がぽつんと一輪咲いていた
  母はいつだって そのような女であって 
  だれのものでもけっしてなかった

  みずかきのようなゴムの手袋
  母は嫌ってそれをつけてはいなかった
  輝かしい しろいみずいろの肌をさらしつつ
  真裸でいつも海へでて
  「ピューピュー」と
  哀しい口笛を吹いていた
  海女の磯笛! 
  その振動を乳房の下の胞衣の密室で
  わたしはいつも聞き惚れていた
  そして産まれいずる日を待ち望みつつ
  真水とも海水ともつかない器官のなかにあって
  ひとり膝をかかえながら
  潮(うしお)うずまく繭の解かれるその日まで
  兄さん
  わたしはその日のくるのを待っていた

       *

(日刊、時々休刊『妖精新聞 第三話』好評連載中!)つづく






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