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藤原北家贋縁起物語 Vol.030

ワニ皮の男と金魚のポピンズ「ザムザの朝」Vol.013  

なおも金魚はブクブクブッと泡を吹いておいてから、
「あなたはわたしの目の玉とガラス玉にばかり興味をしめしていて、もっと愛されたかった」
と、言った。
「黒い雨の涙がとつぜんに降ってきて余裕なんてなかったし、おまけにこんなふうになっちゃって」
と、ワニ皮の男はセシウムのウルシようなものに固められた鱗をじっと見つめていた。
「ねぇ! お食事、しない」
と金魚が言った。
「ああ、こんなものぐらいしか用意できなかったけれど」
と言ってイトミミズとアオウキクサ、麸をすこしずつわけて金魚鉢へ入れておいてから、じぶんはアルコールをすこし飲んだ。
「わたしもこんなはずじゃなかったわ。だからこれはあなたとの最後の晩餐!」
と、麸を飲みこんでおいてから金魚が言った。
「最後の晩餐!?」
「そうね、大きな目の玉の金魚鉢から見る外の世界は人々の疲れが眠っていて、それを見るのはもういや!」
「だから五色川のながれのなかへわたしを流してほしいの」
「なぜ」
「虹の七色になって、あなたとまた出逢うため。それにどうせ、あなたはこれから旅をするのでしょ」
「まあ、そうだけど」
「どのみちこの世界はどこにいたって不条理なのよ。でも、金魚の私を紙のしゃもじで掬ってくれて、あなたは夢の世界へわたしを連れだしてくれてお世話してくださった。私、あなたを愛しています………。それをずっと前から言いたかったの」
「じゃビニールの袋へきみをいれて、腰からさげて一緒に旅をしょうよ」
「無理ね」
「馬鹿をいうなよ………、どうして?」
「それじゃ一生かかってもわたしとあなたは金魚とワニさんのまんまだわ」
「待ってくれよ。なにを言ってるのかちんぷんかんぷんなんだけど、また出逢ってどうなるんだい?」
「あなたって変わっているわ。じゃ生きていてどうなるの? 黒い雨の涙がこんなに降っているときだから、あなたに出逢ったことに意味があって、感動もできるんだわ」
「おいおい、こんな鱗だらけのミドリ色した珍奇なケダモノなんだぜ」
「そこがいいのよ! このご後におよんでも、おおかたの人々はじぶんたちがザムザ人間になったことをあまり認めたくはないんだわ。〈ザムザな奴らはアレルギー過敏症でいやんなっちゃう〉だなんて、笑っちゃう。だってその人たちの瞳には黒い雨の涙が今日もはてしもなく本当は流れているのよ。にもかかわらず………」
と言っておいてから、金魚はイトミミズをズルッと飲みこんだ。(日刊、時々休刊「 妖精新聞・第二話 」好評連載中/つづく)






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