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ロマン・ド・ラ・ローズ # 008



  『金のつぎの銀は雪』

雪はなにもなかったかのように降っている
光はまぶしかったが
かしこい狼はいつだって眼をそらす

そんな光のさきに昨日までそびえ建っていた
金の王国が一晩のうちに滅んだ

それへつづいて銀の王国が栄えたが
これもいつしか滅んでいった

金のつぎの銀は金でなければならないという夢伝説を
人はかぎりなく手探りしていたが

金のつぎの銀は雪であればいいのだと
くらやみからふりかえった狼がつぶやいていた

胸に八つの乳房をぶらさげて
たったいっぴきだけのこどもを孕んだ狼
生きてあるもののわたしとして

          〈 C o r a z ó n 〉より






| C o r a z ó n | 11:32 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ロマン・ド・ラ・ローズ # 007. 




  『パラダイスより遠く』

こころが大きくはばたくとき
サーベルのように煌めく
黒い蝙蝠傘の鉄芯へ硬く結んでおいた
血で染まるリボンの帆をなびかせ
わたしは渡海する

風の無頼たちを手下に従え
艤装されたパラソルの小舟に乗り込んで
祖国とよばれる
パラダイスより遠くはなれ

          〈 C o r a z ó n 〉より





| C o r a z ó n | 12:54 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ロマン・ド・ラ・ローズ # 006.



  『ゆりしすろうれらい』

鼠よ 太いロープを綱渡れ
そっくり返ったネズミ返しを乗り越えろ
そしてまだ見たことも
聴いたこともない
黒ずんだ一枚のレコードのような
古い港街を彷徨い歩こう
小径はどこまでもずんずんと
細く曲がりくねって暗いだろうが
奥地は柔らかな雨に濡れていて
かぎりなく自由だから
また人魚たちが歌ってるから


          〈 C o r a z ó n 〉より





| C o r a z ó n | 10:34 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ロマン・ド・ラ・ローズ # 005.


PCのキーボードが突然、動かなくなってしまった。キーを叩いたり吹いたりしてたら使えたが、またもぐっすりと眠ってしまった。そうしたら、ヘンな詩が降りてきた。



    『眠るバンドネオン』

ころがりおちる夏の太陽と
秋の月が
黄昏のあわいを求め
変わることのない彫像の上で
オデコごっつんしながら鬼ゴッコしてる

(おれの季節だ! 
    わたしの季節よ!)

見知らぬ街の路上では
なまぬるいビールを飲みすぎた男が
膝の上へ古いバンドネオンをのせたまま
迷路の中で
ただ深い眠りを眠ってる

ドミファ・ドミファ・プシュー
ドミソ・ドミソ・プシュシュー

(おや? おやッ!)

穴のあいた蛇腹へやぶれ風が流れ
貝と骨のボタンが踊り
かすかに息づいた夢のリードが震えてる
ハーフ・ハーフ・プシュシュー
ヘーフ・ヘーフ・プシュシュー





| C o r a z ó n | 14:36 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ロマン・ド・ラ・ローズ # 004.



   「クロノス・ポイント」

    ふと足を止める。
皇 妃 「私、青ざめた顔していないかしら?!
    胸が痛いの…」

    (一八九八年九月十日正午過ぎ、
    レマン湖畔にて
    無政府主義者ルイジ・ルケーニによって
    エリザベート皇妃殿下暗殺さる)

       vs

    プラハ*にて。
カフカ 「来るものがいる 行くものがいる、
    別れるものもいて しばしばそれは永遠の別れ」

    (一八九八年十一月二〇日夜、
    冷たくさびしい袋小路の壁へ額を打ちつけ
    フランツ・カフカは二行詩や夢、戯言を綴る。
    フーゴー・ベルクマン記念帳へ)

蛇 足 *カフカは、オーストリア=ハンガリー帝国領の
    プラハに生まれる。
             〈 C o r a z ó n 〉より





| C o r a z ó n | 17:49 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ロマン・ド・ラ・ローズ # 003.



   「一八九八年九月十日」

黒い喪服を着て、黒い
パラソルを差し、黒い扇をもった女

手の中

焼けつくような命。
けど「ありゃ幽霊だね」と、
人は嘲笑するけれども、
絶対的
オーストリア=ハンガリー帝国の皇女にして、「わたしは
彷徨うカモメの狂女!
双頭の鷲のエンブレムなんて知るものか」
虚無の白旗を愛艇のマストへ掲げて、
トワイライト・タイムまでは
ぬばたまの黒い
手袋を嵌めたままでいる・・・ 愚行
夜はファワグラを啄むから。 

(この王朝は、滅びるな)

幾何学的な紋様の凶器にて
ある晴れた朝突然に! 薔薇色の湖

桟橋

途中で
接吻(くちづけ)を交わす、美しい水鳥と園丁の二人組。
或は・・・ 
黄昏少女とダダイストまがいの不良少年
トリュフとファワグラのような一対の、
ディレッタントな恋びと同志。
女のほうは
血まみれでした。
なぜって?
昼と夜とがまじりあう
これは妙にパーフェクトな恋愛代名詞、
歴史上のミステリーだから。
          〈 C o r a z ó n 〉より






| C o r a z ó n | 10:11 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ロマン・ド・ラ・ローズ # 002. 


はや立秋ですが夏はまだこれからが本番です。みなさん、どうぞお身体ご慈愛下さい。



  「ドン・マクシミリアーノ帝滅紫種子学」

乗ってきた船と同じ
軍艦「ノヴァラ」号に乗って、その男は
帰っていったなぁ。

白い陶器のように冷たくなった欠片へ
カーニバルの仮面を「ひょい」と被って、男は
ひどく無口であったなぁ。

ヴェラ・クルスの波止場のモノカゲ!
コンセプティオン・サダ子はその男の種子、赤ん坊を
抱いていたなぁ。

            〈 C o r a z ó n 〉より 





| C o r a z ó n | 11:16 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ロマン・ド・ラ・ローズ #001.


暑中お見舞い申し上げます。


  「薔薇の盗賊」

動物であれば鼻のようなもの、
どす黒い煙突へ『雙頭ノ鷲』の紋章をいただいた
「カイゼリン・エリザベト」と読まれる軍艦の甲板にて、
男は深紅に彩られた一冊の本をひろう。

城のような 
宮殿のような
閉ざされた軍艦

甲板を、
カタツムリのような足取りを残して
ひとり消えてゆく
婦人。

本の持主こそ、かの婦人にして、
オーストリア=ハンガリー二重帝国の麗しき皇女。
エリザベト・フォン・ヴィッテルスバッハ
黒衣の人であった。

(黄昏に咲くバイエルンの薔薇一輪)  

節くれだった指にて磨する
馥郁たる薔薇のごとき
一輪一冊の本に触れた男、
「LE MONDE ANCIEN」とは無学にて、
ちぐはぐに身悶え、唯、うち震るる。

噫…… こんなにも疲れきった、
青い作業服を着て生きる男は水夫にしてかの人のシモベ
「カイゼリン・エリザベト」号のボイラーマンです。
されど、薔薇の盗賊にして
シュルレアリストなり。
              〈 C o r a z ó n 〉より





| C o r a z ó n | 16:47 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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