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オレステス/父らの帰還



 オレステス/父らの帰還

となりの国へ 戦にでかけた父の不在に
母は父とちがう 木偶ノ坊と過ごしてた
ぼくのお腹は いつも空いていたけれど
しかたなしにどこまでも 走りつづけた

もう城へはぜったいに帰らない 帰れない
だからこうして空をながめ 海をながめて
光る夢をたべながら いろんなこと考える
たけきものになるのだと 走りつづけた

海のみえる 丘の地べたへ座りこんで
アイスキュロスの『アガメムノン』を読む
神話は蜘蛛の巣にからめとられたような
ミュケーナイの恐ろしや 悲劇であった

吠えたてて ぼくは逢魔を走るであろう
すると父の船が遠い水平線へあらわれて
母に殺されるがため 父はその頬をそめ
光る海をおごそかに 走りつづけてた





・・・・・・・・僕のイリアス・オデュッセイア詩画 2019





| ないない王のオデュッセウス | 12:13 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ユリシーズの涙


見捨てられて・・・シラミだらけになって横たわっていたアルゴスは、ユリシーズが近くにいるのに気がつくと、尾を振り、両の耳を垂れたが、もう自分の主人に近づくだけの力はなかった。
   ロジェ・グルニエ「ユリシーズの涙」より みすず書房


グニエルのユリシス、この箇所だけで買った本でした。いまもずっと、これからもずっと通底していくことでしょう。






| ないない王のオデュッセウス | 10:05 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
王女カッサンドラ




  王女カッサンドラ

よく食べて よく歩いた
わたしの小犬 ちかづいてきて
こごえでうたう 異国のことば

海のうた 空のうた
どこまでも 澄みきって 
預言者のような 目のない小犬

イリオスの夜の雨にたたずみ
気狂いてゆく 王女カッサンドラ
ポイボスアポロン ポポイポン

口を真一文字につむんだまんま 
わたしはとっくに 死んでいて
わたしはとっくに 生きている

 (アポロン憎しや
    わたしを滅ぼす)

カッサンドラと 裸足の小犬
神話のなかでは 死んでいて
きたるべき街で 生きてゆく

風のうた 花のうた
どこまでも 澄みきって 
うた 歌え 王女と小犬



みなさんに愛された琥珀は、今年になってから肺水腫のため酸素ハウスでいっとき苦しみましたが、それも解放され、いま静かに眠っています。1月26日の朝わたしに抱っこされたまま、おしっことうんちをしたあと、おおきなノビの深呼吸をして永眠しました。立春がやってくれば16歳の誕生日でしたが、全盲というハンディーでよくがんばってくれました。“王女と小犬”の詩とともに、お知らせさせていただきます。ありがとうございました。佐藤

















| ないない王のオデュッセウス | 22:05 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
イリアス・オデュッセイア/魔都


もはやこの都市は魔都となり、魔都はやがて流産をする。ここにひとりの女がいて、女の名はクリュタイムネストラというミケネの王妃であった。王妃には父が異なる妹がいて、母は互いにレダであったが、妹の父親は白鳥と化してレダを犯したドン・ゼウス様であった。この妹こそが魔都をつくりだし、隣街のトロイア王国を全滅させた張本人であった。けれども、いまトロイアは巨万の富を誇って東の丘陵に陣を張る王国で、「月下一群一党組」と名乗っていた。

かの妹の名はヘレネという。亭主はスパルタ王メネラオスで、亭主が留守中にトロイアの王子に口説かれて駆落ちする。おどろいた亭主の泣きついたところがクリュタイムネストラの夫アガメムノンのところだった。ややこしいことにアガメムノンとメネラオスは兄弟で、兄のアガメムノンはミケネはもとより、魔都の西一帯を牛耳っている総長で、「太陽族」の大親分であった。ゆえにアガメムノンはこの機をにらみ、西一帯の組長をすべて呼びあつめ、財宝や利権獲得のための戦争をトロイアに仕掛けた。

オデュッセウスも例外にもれず出陣したが、十年戦争の末、「太陽族」はこの男のおかげでなんとか勝つことができた。しかしトロイアの男はもとより、西一帯の男たちもオデュッセウスただ一人を残し、やがてだれもが死んでいった。生き残ったトロイアの女たちはオデュッセウスを恨みつつ、流れ流れて「人魚館々亭」の樓郭にて未来永劫その男をまちぶせる。(僕のイリアス・オデュッセイア詩画 「ないない王とトロイアの女たち」より 2018)





| ないない王のオデュッセウス | 15:20 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
イリアス・オデュッセイア/般若王


無鉄砲なことをいえば、エーゲ海はひとつの都市である。

むろんそこに浮かんでいる島々はそれぞれの〈シマ〉であり、守るべき火場所であって、アスファルトの海に点在する島々には神殿もあれば城もあって、館や樓郭、映画館やサーカス一座の見世物小屋、鍛冶屋、考古学博物館、バラック、植物園などなんでもあった。寄り道するにはことかからなかったが、橋をわたったり船にのっていかなければならない〈シマ〉もあった。だが中心街の山道をのぼった一郭には立寄りがたいほどツンと澄ました高級住宅地があって、赤ら顔をした〈神々〉と呼ばれるわけのわからない連中が住んでいた。そんな時代のそんな街はずれにあるイタキという貧しい島に、その男は住んでいた。

ところがこの男のことを知らないものはいなかった。けむし男、のっぺらぼう、イオニア海の田舎者、愚者、ひねくれ者、ペテン師、知恵者、浮気者、さまざな悪名や異名で呼ばれていた。ともかくも、なんにでも対応できるマルチな男であった。人であれ神々であれ、その男の力を利用しようとする反面、恐れられてもいた。では、何者であろうか…。オデュッセウスという名の金看板を背中にしょった、とびっきり繊細で無欲透明な般若王であった。けれども般若だという本性をだれも知らない。(僕のイリアス・オデュッセイア詩画 「ないない王とトロイアの女たち」より 2018)



今年も大変お世話になりました。皆さま、どうぞ佳き新年をお迎え下さい。





| ないない王のオデュッセウス | 14:36 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ないない王とトロイアの女たち


ホメロスの『オデュッセイア』で遊んでいるうちにようやく自分なりの骨がみえてきました。ですので夏に書いた「凪渚のオデュッセウス」を書直しました。よかったらまた読んでください。

      *   *   *

その男はアルゴスという小犬をポケットにいれて今日も海辺へむかった。男は知恵があるぶんやることは非情で、悪名高き策略家という噂があった。むろんそういう男ではあったが、ギリシャの詩人ホメロスが書いた『オデュッセイア』の主人公であり、えげつない汚さや暗さはなかった。

そんなふうな男はイタキという小さな島の王で、島には西風がいつも吹いていた。だから西のことはなんでも知っていたし、東のことさえわかっていた。風は球体を循環していたから、東の国のうわさ話などはあとでゆっくりと聞けばよかった。西を先取りして、東を取戻し、中の中を取るというふしぎな男であった。

中の中取りには秘密があったが、男はその術をいまだ知るよしもなかった。

気がつくと、サンダルの紐がほどけていたので結ぼうとしたとき、ポケットから愛犬のアルゴスがころころっと転がりでてしまった。捕まえようと思えばおもうほど砂浜を転がって、とうとうどこかへ消えてしまった。すると風がやんで、海が凪いだ。しずかな刹那とすれちがった男はパッと一瞬だけ消えて、のっぺらぼうの「ないない王」になった。けれども、自分が多中心の中の中心にいることを知らないでいた。

はた目でみていても海はさっきからずっと荒れていたし、西風も朝から休むことなく吹いていた。東から吹いてくる風もピューピューとあとからついてきていたし、イタカキの島はいつもとかわりなくそこにあった。(僕のイリアス・オデュッセイア詩画 「ないない王とトロイアの女たち」より 2018)






| ないない王のオデュッセウス | 13:54 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
エレクトラとオレステス


タンバリン・ギャラリー(神宮前)にて12月11日(火)から始まる「タンバリン展」に参加します。105名のタンバリンが並びます。きっと楽しいと思います。

http://tambourin-gallery.com/tg/2018/12/tambourin-gallery-presents-fantastic-days-2018.html

ぼくはタンバリンを叩いて弟を呼寄せるエレクトラと、復讐の蠅に追われつづけるオレステスを描きました。ふたりの物語は、遠い日に読んだ安寿姫と厨子王丸を思い出します。よかったら見て下さい。






| ないない王のオデュッセウス | 21:23 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
イリアス・オデュッセイア/行水と鎧


私は明治生まれの信心深い、髪の黒い老婆から最初の教育をうけた。

老婆は占いもやったが、産婆術を身につけていて、私も弟も、その老婆の指先から産まれた。老婆の母は藤堂藩の御殿医だった奥医者の傍使いをしていて、産婆術はその母から習ったと言っていた。ある日、私は老婆の部屋にあった押入をだまって開いたことがある。古いゴム管のチューブやうす汚れた脱脂綿とともに妙なかたちの医療器具が甲高い音をたてながら、バラバラッところがり落ちて、あたりに散らばったことがある。棚には大きな箱がまだいくつかあって、箱と箱との窮屈な隙間に糸で閉じられた本が無造作に置いてあった。本を開いてみると、うすももいろをした身体がぱっくりと開いている絵が描いてあって、いたづらをされたカエルのような格好をしていた。それが“いのち”の姿であることが解ったのはもっと後のことである。そういう家で、私は育った。

老婆は朝起きると神棚へお神酒をそなえる習慣があって、前日のお清めを下げると私を呼び、盃へ粉砂糖を落とし薬指で何度もこねておいてから、私に飲ませた。機嫌がよい日は話をしてくれたり本を読んでくれた。『安寿と厨子王丸』『やまとたける』『赤いろうそくと人魚』『地獄極楽』など、たまに『白骨の文』というオソロシイ念仏もあった。

そのような老婆もいつしかいなくなって、小さな田舎町から都会へでてきたが、なぜだか自然、水中花のような人魚ばかり描いている。そして私はこの街で迷い、さすらい、派手な幕をひろげることもなく、とうとう時間ばかりが過ぎ去ろうとしている。そんな一刹那、一瞬間において、強烈に苦悩するギリシャ文学(悲劇)のおもしろさにいま目覚めようとしている。「男は鎧を身に着けるたび時間を浪費して、女はただ行水をしている」ヒースの茂る荒れ野原から、なつかしい婆の声がする。(僕のイリアス・オデュッセイア詩画より、絵は「人魚とないない王のオデュッセウス」 2018)






| ないない王のオデュッセウス | 21:25 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
イリアス・オデュッセイア/ 曳航


アケロンの川がながれる夜の国からもどったその男は、帆を順風にまかせながらセイレンの島へむかって船を進めていた。島へ近づくにつれて風はやみ、海が凪いでいった。またもやなにかが死んだように眠っている光景をみとどけたその男は、部下たちに帆をおろすように命じて白い帆布で船の甲板を巧みに覆いつくした。船はまるで死者が羽織る経帷子のように静まりかえってしまったが、甲板と帆の隙間では船乗りたちがザワザワとしながらみな隠れていた。セイレンの妖しい姿や歌声を見ないよう聞かないようにと、かねてから用意しておいたロウの塊で耳の穴を封印していたからである。そんな儀式も終わると、船乗りたちは猫背になって櫓を漕いだ。ただ一人、艦長であるその男だけは耳にロウの蓋をすることもなく青銅の錨のうえで身動きできないほどきつく縛られていた。男は腹這いになって隠れながらも、帆と甲板の隙間から船の舳先にしるすホルスの護符のようなギラギラした眼をセイレンの島へむけて、いまにも歌われるであろう歌声に注意をはらった。帆船の後方には小さな救命ボートが一艘ゆらゆらと曳航されていたが、ボートには艦長に似せた泥人形が座っていた。

ところが、セイレンは歌わなかった。

オデュッセウスは狡猾なペテン師ともひねくれ者とも多重思考のできる天才とも呼ばれていたから、さすがの歌姫も歌わなかった。その男の裏をかいて沈黙をまもりながら、あと百年を生きるために、上等な知将からしぼりとる血のぶどう酒をどのようにして手にいれようかとそのことばかりを考えていた。まどろっこしい歌よりも手の内から甘く匂うめしべのような磁力を発散させて、船の羅針盤を狂わせた。あわや岩礁に船がたたきつけられるその刹那! オデュッセウスは錨のうえで親指を立てた。すると一等航海士のエウリュアロスが救命ボートのバランスを崩すためのロープを引張った。知将に似せた泥人形はするするっと滑って海のなかへ消えていった。のがすものかと、セイレンは海へ飛び込んだ。

船はその隙にじょうじて遁走したが、間近にてその男がみたセイレンの美しい横顔は、先のトロイア陥落の折にあらゆるものをむしりとられてもなお深淵なる苦海を泳ぎつづけなくてはならなかった王女アンドロマケそのものであった。(ぼくのイリアス・オデュッセイアより、絵は「曳航」2018)






| ないない王のオデュッセウス | 17:54 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
イリアス・オデュッセイア/丸い眼が一つだけの巨人キュクロプス


へーパイストスという鍛冶職人は自由自在に歩くことのできる真鍮製のロボットを造った天才で、一つ目巨人キュクロプスはこの親方の弟子となって、その工房でいろんなことを学んだ。彼はすでに独立して、いまはシチリア島の近くに住んでいた。オデュッセウスはトロイア戦争の帰路、この島へどうしても立寄ってみたかった。世界を二分するほどの原因をつくった美女へレネの秘密を証しておきたかったからである。キュクロプスはキュクロプスで、オデュッセウスがこの島へやってくることを兄のポセイドンからすでに聞き知っていた。

オデュッセウスはさっそくに、美女へレネは機械仕掛けのからくり人形ではなかったのか・・・とキュクロプスにたづねた。すると一つ目をウインクしながら「おまえが持っている白金の、そのペーパーナイフをおれにくれたら教えてやろう」といった。そこでオデュッセウスは左腕のホルダーにつけておいた匕首をさしだした。光だけはりっぱだったのでキュクロプスはよろこんで、すぐにヘレネの秘密をしゃべった。

あれはおれの造ったものではなく、お師匠さんである親方のへーパイストスが造った自動人形で、未来的なイブなんだといった。では、“いのち”の始末はどうすればいいのだとたづねると、キュクロプスは丸いおおきな目玉をぱちぱちさせて、さっき手に入れたナイフを二三度ほど噛むと、まっ赤な顔をして怒りだした。革新素材のステンレス製だとばかりおもっていたナイフがへにゃちょこなブリキ製であることを見やぶったからである。肝心な謎を聞きだせないまま、あとは逃げるが勝ちとばかりにオデュッセウスはその島を逃げだした。老いたキュクロプスは四角い紙切れにスケッチしておいた火炎放射器の操作図面をみつめながら、まだ若やいでいるレーザー光線のような火焔をオデュッセウスの船にめがけてプーッと吐いてみせた。(ぼくのイリアス・オデュッセイアより、絵は「丸い眼が一つだけの巨人キュクロプス」 2018)





| ないない王のオデュッセウス | 14:34 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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