2019.03.08 Friday
イリアス・オデュッセイア/エレクトラとオレステス
幼かったころ、祖母がよく読んで聞かせてくれた「安寿と厨子王丸」の地、舞鶴(丹後)へ父の都合で引越す話がもちあがった。けれども古い家に固執した祖母によって反対をされた。わたしにとって、以来、舞鶴は心のなかの故郷となり、その後、なんどとなくその地をたずねたことがある。はじめて見た雄大な由良川や雪をかぶった由良ヶ岳、舞鶴港にあった赤レンガの倉庫群、青灰色の軍艦などどれもがわたしの住んでいる地ですでに見たことのあるようなものばかりだった。いいところだなと思慕した。
こうして今エレクトラやオレステスのこと、あるいはジャン・コクトーの『恐るべき子供たち』のことを考えていると、その思慕が幻がリアルなものとなり、古代ギリシャも平安末期もクソッたれなものになってゆく。
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・・・・森鴎外の『山椒大夫』より抜粋
「姉は今年十五になり、弟は十三になっているが、女は早くおとなびて、その上物に憑かれたように、聡く賢(さか)しくなっているので、厨子王は姉のことばにそむくことができぬのである」