飛行機の墓地
香水で想出した本が別にあったので記します。
これも二〇代に読んだ本です。空で暗記できるほど、ぼくの血肉になっている箇所です。

「・・・あなたに是非ともお聞かせしたい夢をみましたの。余り不思議なので今でもハッキリ覚えています。サーチライトの縞を縫って飛行機が沢山、入乱れて戦っていますの、みんなぴかりぴかり光っていました。そうしたならば頭の上から何か落ちてきたので、拾ってみると少うしよごれた市松模様のハンカチでした。それは水仙の匂いがしています云々」

上記の一節は稲垣足穂の『飛行機の墓地』ですが、なぜだか、宮崎駿の『紅の豚』を想出させます。



| 文学のこと | 07:29 | comments(2) | trackbacks(0) |
墓地展望亭
以前から、もういちど読み返してみたいと思っていた本を読んでみた。久生十蘭の『墓地展望亭』だ。彼の全集本は何冊か持っていたが、手持ちに収められていなかったので、現代教養文庫No.893の『地底獣国』を開いてみた。この文庫本は二〇代後半に入手した記憶がある。同書の中に収められている『海豹島』の非在性は見事なものであったが、どこかしらお伽噺にも似た、この『墓地展望亭』のロマンチシズムの非在性の方により強く魅かれていたような気がする。それが証拠に、タイトル文字である・・・“展望”・・・の活字の上に、じぶんの指の血痕が赤黒く残っている。文庫本を読んでいたときにカッターの刃か何かで傷つけたものだった。残されたその指紋を拡大鏡でいま調べてみると、右手人差し指の先端と一致した。

人は不思議なもので、いくら時代が変わろうが洒落ようが、若いころに観たり聴いたり読んだりしたものは忘れがたい、この本もそんな一冊だ。しかし、再読するには(言うほど長くはないが)眼力も気力もそこまで回らない。というか、新たな情報もそれなりに仕込みたいし、再読はいかんせん億劫なものだ。だが、昨晩床へ入って2〜3頁をペラペラめくって美味しい所取りするつもりだったが、うっかりと全部読んでしまった。

現在ブログにて『トランスシルヴァナイト/馬蹄形の縷々』という長編散文詩の駄文をアップしているが、
「『墓地展望亭』を読んでみろ! 」
と、じぶんの声が妙に最近うるさくてならなかった。
それで読んだのだが、やはり面白かった。
・・・日本人男性とリストリア王国の王女である少女との恋物語で、いささか荒唐無稽ではあったが、その“無稽の無形”である非在性の妙なる舞台設定が、とでもいうか、装置や言葉の磁場がとても面白かった。
じぶんがいま、ながい年月を経過して帰着できる安心した世界。それが、
「なんだ、そうしたことか?!」
と素直に思えた箇所がこの『墓地展望亭』にはあった。カマトトぶって気恥ずかしいが、内容をざッとかいつまんでから、最後に一行だけ記しておきたい。

*あらすじ・・・偶然に一夜をともにした少女がリストリア王国の王女であることが判明したが、王位継承問題やクーデターの後、王女の即位祝賀式の謁見に招待された主人公の日本人青年に対して、王女にそしらぬ顔をされてしまう。彼は憤慨し、支離滅裂(まったく別人と思うようになる)となるもその後、故あって、この王女と逃避行することになるのだが、いまだそのようなことは夢とも知らぬとき、王女から届けられた白い角封筒を開くと、じぶんが以前に失くしてしまった王女の写真が同封されていた。このとき、王女専用の高貴な香水が匂い漂う。懐かしいその匂いによって、王女が“あの夜の少女だった”と確信する。そのときの一行が次の言葉だ。

『じぶんが願っていたのは、こういう、ちょっとした厚意・・・それだけでよかったのだ』

見落としてしまいそうな細やかな厚意! 人はそうしたことによって人とのつながりを回復して、快活になれる。青臭いがこの箇所にグッときた。



| 文学のこと | 12:26 | comments(2) | trackbacks(0) |
老嬢逮捕


    一

蜘蛛のおばさんとも血の伯爵夫人とも呼ばれる城館の老嬢は、双頭の鷹を旗幟冠に戴くハプスブルク一族につながる御人なり。老嬢は十一歳で加虐的性格者であるハンガリアの貴族フィレンツ・ナダスディ伯爵と婚約した後、夫二十五歳、老嬢十五歳の折りに結婚。二人はスロバキアのニートテ地方にあるチェイテ城にて蜜月を過ごさんも、フィレンツ・ナダスディ伯爵がオスマントルコとの戦いで戦死するや、老嬢そのころより蜘蛛に似て、魔術を使う。

    二

老嬢は処女の血を吸い、血の風呂へ入ることによって若返ったとも。また、『鉄の処女』という針の人形や、『鳥籠』と呼ばれる恐ろしい死刑具を使って処女を弄んだと伝説されているが、これは捏造なり。老嬢による犠牲者は六百人以上とか・・・これも嘘なり。真実、老嬢逮捕の裏には宗教的、政治的、経済的陰謀によるものなのだ。たとえば、ハプスブルク家のハンガリア国王が老嬢の夫に負債があり、その負債をもみ消すための陰謀であった。あるいは、カトリックだったハンガリア王とプロテスタントであった老嬢との勢力争いによる猿芝居である。または、夫フィレンツ・ナダスディ伯爵の死後、再婚を希望する老嬢の遺産相続をめぐっての誹謗中傷で、これもハンガリアの副王が絡んでいた。ともあれ、老嬢は貴族院裁判によって幽閉された。

    三

無残にも、夫フィレンツ・ナダスディ伯爵と蜜月をともに過ごしたチェイテ城に老嬢は監禁された。しかし、王室と血縁関係のある老嬢には味方も多く、チェイテ城の密室に幽閉されたのは影武者なり。バートリとは〈強者〉の意なり。老嬢バートリ・エリザベートには森の巫女をはじめ、老嬢よりも老獪な乳母や、冷徹な家令、命知らずのツガニー等がいた。なかでも頼りがいのある御方は、眠る死騎士であられるドラキュラ侯爵様・・・なんと他愛のない茶飲み友達がいた。

    四

この冬、老婆は二五〇回目の長い長い誕生日をむかえる予定だ。お客様は、老嬢からすべての魔法学を伝授なされたワラキアの少女と、尻に青い痣のある甥ッ子かしら。

蜘蛛のおばさんは可愛いリボンを八本つけて、それが手足のように揺れてござった。


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| トランスシルヴァナイト | 16:25 | comments(0) | trackbacks(0) |
マラカイトな夢
粧いする蝶のようなリボンを腕に結んだワラキアの看護婦少女メムリンク
やぶれた蛾のような靴をはいて佇むた少年十字軍負傷騎士ゴロー

しばし 蒼黝き珪酸銅で眼病予防する血の伯爵夫人の城館にて眠らん


| トランスシルヴァナイト | 12:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
爪の旋律


蜘蛛のようにころころとした女主人の城館の一室で仰臥しても
なお寝つかれない
天井に張られた白雲母紙が真珠色に光っている
自分はもう蜘蛛の糸に巻かれた紡錘形の虫になってしまったかと
そんな愚かなことを考えた

雪とチェンバロと爪の旋律が
華やかだったろう伯母の舞踏会を思わせて静かに響いた


| トランスシルヴァナイト | 10:10 | comments(0) | trackbacks(0) |
蜘蛛と雲母と雪とチェンバロ


召使に誘われるがまま案内されて玄関で雪をはらってから
「伯母様、ただいま」と 挨拶をしたが女主人からの返事はなかった
大広間の天井には天球儀のようなシャンデリアが吊りさがっていて
色鮮やかな光が雲母紙を張った天井にぼんやりと吸いこまれて美しかった
「伯母様、ただいま」と こんどはヌヌが挨拶をする
聞きおぼえのあるチェンバロの音がかすかに響いているばかりであった
たまらなくなって旋律のするほうへと歩みよってみると
流れる曲は『ふたたび逝きて此処へ還らん』のパヴァーヌだった
「伯母様!」と みたび呼んでみる
すると 目の前にひろがった階段の上でガタリッ!と物音がして
人の動く気配がしたかと思うと黒い影が階段の上に立った
「おお、これはメムリンクとギーか。さあ、これへ」と 言った
伯母は喪のような装いをしていて 
髪には長くて黒い大きなリボンをいくつも結んでいた
しばらく会わないうちにすっかり背丈が縮んでしまって太っている
髪に結んだ黒いリボンが手足のように揺れるたび
あれは蜘蛛ではあるまいか? と思ったが
靴の中の靴下がじわじわと濡れてくるのに気がついて
「エリザベート伯母様。ただいま戻りました」と 挨拶をする
メムリンクもいまだ雪で濡れている膝を折って宮廷風に挨拶をした


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| トランスシルヴァナイト | 17:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
城館の庭
生温かな母の胎内のように狭苦しかった四輪馬車から
ぼくたちは双子の兄妹がころがり堕ちたかでもしたかのように外へでた
馬車は降り積もった新雪の一角に黒いわだちの跡だけを残して
雪明かりでうっすらと煙った庭園に止まっていた

バートリ・エリザベート伯母様の城館に粉雪がしんしんと降りかかっている

馭者のカヌートがピシッと鞭を鳴らすと
城館の鎧扉からゴシックな衣装を身につけた召使が二人顔をだした


| トランスシルヴァナイト | 00:01 | comments(0) | trackbacks(0) |
遁走の仮面
馭者のカヌートが蒼白な顔をして雪の仲に佇みながら
遥か遠いむこうから馬車のドアをノックしていた
そんなカヌートとおれ? いや! ぼくとのあいだに
メムリンク? いや! ヌヌはいた
おれは? いや! ぼくはもう睡眠状態から覚めて死の探求を放棄していたが
ヌヌは? いや! メムリンクもガラスに映していた不可知の自分をとうに見捨ててしまって
自分の過去や 自分が彷徨い辿ってきたすべての痕跡はなかったかのように
本音がみえない洒落た都会の女ヌヌとして 遁走の仮面を被っていた

馭者はなにごともなかったように「フォガラシ城です」と ドアを開いた


| トランスシルヴァナイト | 20:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
ドラゴンの洞窟


言わずもがな 
レムとはこの旅の途中で立寄った
あのセントゲオルグ村の族長
レム・グローティス王のことである

影のように痩せて眼は眠っていたが
精悍な姿は荒鷲のごとく覚醒していた
黒い僧衣に黒い長マントーを羽織って
言葉はすべからく寝言のようであった

聞けば昔
セントゲオルグの村に邪悪なドラゴンの洞窟があり
翼の生えたドラゴンはかろやかに空を飛んで
遠くはドイツやオーストリアの姫君でさえ襲う

このことによって
ヨーロッパ諸国の王はこの村をこぞって襲撃したが
ドラゴンを退治することは誰もできなかった
ただ この地方が荒れただけである

トランシルヴァニアも
ワラキアも
モルダヴィアも
それがために荒廃をした

ときにドラキュラの父君
ブラッド・ドラクル様がいらしたころ
ドラクル様の臣下に武勇すぐれた者がいて
翼あるこのドラゴンを退治した

このことによって
ドラクル様は神聖ローマ帝国より〈龍〉の称号を任じられ
帝国の正規構成員となり
皇帝よりドラゴンの騎士に叙任される

この日の夜 ドラゴンの息子
ドラキュラ王子が誕生する
よって三国はしばし平和となるも
ブラッド・ドラクル様が何者かによって暗殺される

下手人はフニャデ・ヤーノシュの子飼いの男
ヴラディスラヴ二世とか
親玉はフニャデ・ヤーノシュ
ハンガリア王マーチャーシュ・コルヴェヌスの父親とか

ドラクル様の長子ミルチャ様も殺害される
次男ドラキュラ様は
翼あるドラゴンを退治した男によって
ドラゴンが棲んでいた洞窟をぬけて命を拾う

いまは昔のはなしなれども
ドラゴンを退治した男とはレムなり
以後 レムは龍の息子ドラキュラ王子に忠誠を誓い
ビザンティン帝国参戦の折も従事する

参戦すれどもビザンティンは破れ
ドラキュラ王子はトルコの人質となるが
レムによってまたも王子は救出されて
エーゲ海めざしてボドルムの港へと至る

ボドルムの港は聖ヨハネ騎士団の領土なり
騎士団とワラキアはゆえあって深き仲ゆえに
騎士団の本拠地であるロードス島へ
行け!と レムは騎士団にむかって言う

このとき船のなかにて珍しき女奴隷の話しを聞き齧る
王妃ネフェルティティに似ているがゆえに
エジプトへ高値で売られた女奴隷の西洋娘を・・・
レム! はたと驚く

ブラッド・ドラクル様の御曹司 
ミルチャ様の忘れ形見か
そはメムリンク・ヴラッドミルチャ姫
エジプトへ行け!と レムは騎士団にまたも言う

ために
エジプトの船をトルコ軍が襲撃した好機をつかみ
機に乗じてトルコ軍を襲撃し
エジプト王ザヒール・ジャクマクと謁見する

風にはためく軍旗のように
すらりと立ち上がってみせた男レムは
金太りの男に会うが当初からの目的で
ついにヴラッドミルチャ姫様と再会する

船上にてドラキュラ王子と姫様が再会するも
すでに王子は歳よりも老けていて 
姫も哀れな姿であったが
レムのみが 呪われた美を見抜いていた

姫の哀れを案じたレムは
蠱惑の奇形を冷やすがために
東欧随一の魔女 
バートリ・エリザベートにその肉体を託す

王子はブカレスト近郊にあるブラン城にて
疲れた身体を一生涯癒しつづけながら
城から出ることもなく眠りほうけたとの伝説
レムはこの間 ドラゴンの洞窟をたえず往き来する

ドラゴンの洞窟とは
ブラン城とフォガラシ城へ通じあう地下道にて
この洞窟をレムが往き来きするほどに
ついにドラキュラとエリザベートは恋慕する

レムは精悍にして一陣の風ごとき恐ろしの
軍旗はためく荒鷲に似て
まこと憎めぬキューピッドなり
ゆえにレムの王とまで確と親しまる


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| トランスシルヴァナイト | 00:31 | comments(0) | trackbacks(0) |
少女、そして軍旗の男


                * * *

「この顔はね。と、女が切りだした。

そして、ある話しをしてくれた。

「いまガラス窓に映っている本当のわたし、つまり、メムリンク・ヴラッドミルチャのことなのよ。こんな顔になっちゃったのはね、あなたがさっき言っていたエリザベート伯母様からの便りにもあったように、エジプト王アクエンアテンに恨みを残した神殿派神官の末裔のせいなの。ビザンティンの戦いの後、あなたはエルサレムの戦場へ、わたしはエジプトの閨房へ売られてしまった。あなたも知ってのように、わたしの後頭部はアクエンアテンの王妃ネフェルティティに似ていたがために、神殿派神官の末裔たちに高値で売られてしまった。この神殿派神官たちは、第十八王朝アクエンアテンのときにアマルナ宗教改革というのがあって、そのときに政権を奪われた人々なの。アクエンアテンは平和の人だったと噂されているが、病弱で神経質な王だったから、裏ではそうとう酷いことをやっていた。だから、その王妃に似たわたしの後頭部に高値が付いたってわけ。それでいまでは大富豪となった神官の末裔に、毎夜となく、それはやさしく、いやらしいほど惨たらしい愛され方をしたの。この顔の皮膚はその記憶!? と、言った。

おれはなにも応えることができないでいた。

「亜麻でこさえたロープに縛られて、夜な夜な、ときには昼間からうっすらとした毒物を吸わされて、黒光りをした金太りの男にわたしは肢体を委せていた。寝床のシーツにはミイラをつつむときに使用する百五〇番手の上質なリネンや、レースの枕がいつでも花のように汚れていて、汚くてきれいなわたしをその上で男はたぶらった。そんなある日、地中海制覇の欲にかられていたマホメッド二世(メフメト二世)がその男の所有していた船団を襲ったの。利権のころあいを狙っていたロードス島の騎士団、すなわち、聖ヨハネ騎士団がトルコ軍を逆襲したため、彼らはエジプトのマムルーク朝、ザヒール・ジャクマクとカイロの王宮で謁見することとなった。帰り道、騎士団は男の館へも寄った。男に招待されたからだった。男は騎士団に女たちを晒しながら自慢をした。そして、若い騎士たちはそれぞれに女を抱いた。が、そのなかに一人、残虐な風貌をした騎士がいたが、彼はだれよりも優美で、女のことは気にもとめていなかった。椅子に座って水パイプを吹いてくつろぐこの騎士のご機嫌をとるために、男はわたしを呼んだ。騎士はわたしを見ると青褪めて、風にはためく軍旗のようにすらりと立ち上がってみせた。
『貴方様には以前にお目にかかったことがあります』と、言った。
わたしはうっすらとした毒物を吸わされていたのでなにがなんだかさっぱりしなかったが、金太りの男は『しまった』という様子でおろおろしていた。騎士がその男になにかを話すたびに、男はぶるぶると首を左右に振ったかと思うと、つぎは米突き飛蝗のようにぺこぺこした。ぺこぺこぶるぶる、ぶるぶるぺこぺこをくり返していた。
気がつくと、わたしは聖ヨハネ騎士団の美しい三角帆でできた四本マストの大型軍船ガリオンに乗っていた。船はいったんロードス島へ迂回した。ベネチア

            THE KNIGHTS OF CHRIST/ARMS SERIES 155

行きの荷物を積み込むための帰路だった、そして、じきベネチアをめざした。このころ、ジェノヴァが衰退すると、計算高いベネチア人はこの騎士団を無視できなくなっていた。そこで、彼らをかかえこもうとしたが、そんなことにおかまいなしの騎士団は、これ幸いとばかりにトルコ軍の鼻息のかかったエーゲ海をさけて、ベネチア人が支配するアドリア海の航路を利用した。わたしはこの軍旗のような騎士に連れられて、ベネチアの港から南へむかい、ハンガリア王国からワラキア侯国へと至ったの。エーゲ海からコンスタンチノープル、そして黒海へ入ればすぐにもワラキアだったが、いかにも遠回りな旅をしてしまったものよね。しかし、そうでもしなければ、わたしたちはじきトルコ軍に捕えられていたでしょうに。
ゴロー、軍旗のような騎士とはいったいだれと思って? と、おれを問い詰めた。
「メムリンクのことを顔見知っていて、エジプトの富豪から足抜けさせるだけの金銭を支払い、その先、ワラキア侯国まで同行できる騎士とは・・・
「さ、だれかしら? と、メムリンクがまたも念をおした。
「ドラゴン騎士団に縁のあるものか、ヴラッド家に関係の深い方だろうか。
「レムよ! と、ぶっきらぼうに言い放った。

                * * *


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